『プラネタリウムに誘ったのも、天体にはどのくらい興味を示すかな、と思ってね』


なにせ何もない田舎だから、あるものと言えば、自然と人情と綺麗な星空だけだ…と語った。


『私は航さんの審査基準をクリアしたからプロポーズされたの?』


条件だけで選ばれたのかと悲しくなって聞き返した。
上を向いていた彼は体を横にして、私の背中に腕を回し……


『そうじゃない。さっきも言っただろう。凛が俺の中に棲み着いたんだ』


唇を合わせながら、それで…と囁く。


彼の腕に包まれて素直に泣けた日のことが、私達の始まりになっていたんだ…と、あの時、初めて知った___。




「そう言えば、凛のお祖父さん、この頃は心臓の方は大丈夫なのか?」


川面に集まるメダカの列を見つめながら、彼が私に問いかけてくる。


「大丈夫よ。脈を整える薬も飲んでるし、家では『憎まれっ子世に憚る』だから後十年は生きれるよね…と話してるの」


「それ言ってるのお母さんと凛だけだろ」


お父さんは絶対に言ってなさそうだと言う彼に、ちぇっ…と唇を歪ませる。


「それだけ元気だってことだから安心してて大丈夫」