「っもう、どうしてそういうことばかり思うの。そう言われたら怠けれないじゃない」


「いいじゃないか。俺はそういう凛が好きなんだ」


照れもなくそう答える彼に目を向け、矢神さんの娘さんを見舞いに行った時にそう思った…と話していたことを思い出した__。




『…あの時、泣いてる凛を抱きながら思ったんだ。真面目で一生懸命で、可愛いな…って』


彼の実家へ初めて伺った日のことだ。
私の何処を好きになったのかと理由を聞いたらそう言った。


『それまでは、付き合う相手のことを何となく審査する気分でいたんだ。だけど、凛は真っ直ぐと俺の胸に入ってきて驚いた』


運命かな…と思ったらしく、少しおかしくて微笑んだ。


『初めてのデートでドッグカフェに行っただろ。あれも本当は試してたんだ。凛が犬を怖がるのかどうかを知りたくて』


往診先には番犬が繋がれていたりもする。だから、犬嫌いでは困ると思ったのだそうだ。


『大好きだと聞いた時は嬉しかったし安心もした。でも、同時に子犬にも少し嫉妬した』


つくづく心が狭いな…と呟く彼が、そんな風に思っていたなんて。