「あら…でも、私は此処に来るのが楽しみなのよ。都会にはない美しい自然や空気を満喫できるから」


スーッと胸一杯に清々しい空気を吸い込む。
空気が美味しいという言葉を此処に来ると実感する。



「四月になったら…」


声を発する彼に振り向き、何？と顔を覗かせた。

私に視線を向けた彼の頬が薄紅色に染まり、うん…と頷く様な声を出す。


「四月になったら長期休暇を貰うんだろ？」


此処に来る準備をする為に…と話す彼に、そうなの！と声を弾ませた。


「初めてのロング・バケーションよ」


たった一週間だけど。


「もう楽しみで仕方ないの」


嫁入り準備よりも仕事を休めるということが。


「楽しみ過ぎて毎日ダラダラ過ごしちゃったらどうしよう。引越しの準備や披露宴の招待状なんかも放って」


ニヤニヤと笑う私に吹き出し、そんな姿は想像出来ないと言い出す彼。


「凛は忙しいとブツブツ言いながらも動いてそうだよ。俺にはそんな姿しか見えてこない」


何でも真面目で一生懸命だからな…と、褒めているのかディスっているのか。