ロング・バケーション

おまけに相手は私に看護師を辞めさせ、専業主婦になることを望んだ。


「おじいちゃんが許せなくて、嘘を吐いたの!?と抗議をしに行ったら、あんなことになってしまって……」


自分が馬鹿だった…と反省の言葉を口にする。
目を伏せて項垂れる私の頬に手を触れ、彼が優しく問いかけてきた。


「凛は……お祖父さんに遠慮して、俺との付き合いを止めるのか?」


自信無さそうな声だ。
私の行動は、やはり彼を傷付けたのかもしれない……。


目線を上げると窺うように見つめてくる。
冷えた空気の中を駆けてきたらしく、頬や鼻先が赤い。


「……付き合いを止めるとか、考えてないよ……」


もしも、そう思うなら此処には来てない。


「私は此処へ来て、もっと沢山航さんのことが知りたいと思ったの。故郷がどんな場所かを見たくて、それで朝早く電車に乗ったの」


彼のお父さんのことも気になったし、病院のことも、故郷の何処がいいのかも全部知りたくて__。


「航さんとの距離を縮めたいから、ただそれだけを思って………来ちゃった」