ロング・バケーション

要は嫉妬したんだ、と本音を話す彼の顔が赤い。
心が狭いだろ…と肩を落とす姿に呆れつつも、うん…とも言えず__。


「俺、凛がタクシーで去った後、酷く落ち込んだ。やり切れなくて、苦手なビールを三缶も空けたんだ。
そしたら、次の日は二日酔いだろ。薬を飲んでも頭はぼうっとするし、顔も上げれなくてさ」


私が食堂にいることも目に入らなかった。
転ばないように足元しか見ていなかったそうだ。


「医者が二日酔い?」


そうとは聞いていたけれど。


「医者でも二日酔いにはなるよ」


そう話す彼のことを見つめながら、いつの間にか止まっている涙に気づく。

スン…と鼻を吸っても詰まってなくて、あんなに悲しくて泣いていたのに…と呆れそうだった。



「俺を許してくれないか……凛」


顔色を窺うドクターに目を向け、自分も逆上してしまったと思う。

あんな風に怒らず、彼としっかり話せば良かった。


「私の方こそ、航さんの言うことをきちんと聞いておけば良かったの。
日曜日に縁談の相手に会ったら、おじいちゃんが私に言ってたことは全部嘘で、騙されてたんだと知った…」