(居ないのか……)
息を弾ませながら肩を落とし、項垂れながら改札を抜け、帰ろうとしたんだが……
ふと思いついてポケットに手を入れた。
自分のスマホを取り出し、彼女に電話をしようと試みた。
(どうか出てくれよ)
真面目な凛が車内で電話を受け取るとは思い難い。
でも、着信履歴だけは残したいと考えた。
発信歴から彼女の番号を選び出し、発信をタップして直ぐに、駅の構内に響くコール音に気付く。
その音は壁際の長椅子の方から聞こえ、視線を向けてから立ち竦んだ。
電話を見つめていたのは水色のコートを着た女性だった。
黒い毛糸の帽子を頭に被り、迷う様な顔つきで座っている。
俺はその姿を目に入れて歩きだし、少し近付いてから発信を止めた。
ス…と止むコール音に女性の目が悲しそうに涙ぐむ。
まるで、あの日曜日のように思え、「凛…」と囁きながら近付いた。
ピクッと指先を動かした彼女は、恐る恐る目線を上げる。
その瞳には涙が浮かび、俺はそれを見ると堪らない気持ちが湧き出して抱き締めた。
「凛…」
息を弾ませながら肩を落とし、項垂れながら改札を抜け、帰ろうとしたんだが……
ふと思いついてポケットに手を入れた。
自分のスマホを取り出し、彼女に電話をしようと試みた。
(どうか出てくれよ)
真面目な凛が車内で電話を受け取るとは思い難い。
でも、着信履歴だけは残したいと考えた。
発信歴から彼女の番号を選び出し、発信をタップして直ぐに、駅の構内に響くコール音に気付く。
その音は壁際の長椅子の方から聞こえ、視線を向けてから立ち竦んだ。
電話を見つめていたのは水色のコートを着た女性だった。
黒い毛糸の帽子を頭に被り、迷う様な顔つきで座っている。
俺はその姿を目に入れて歩きだし、少し近付いてから発信を止めた。
ス…と止むコール音に女性の目が悲しそうに涙ぐむ。
まるで、あの日曜日のように思え、「凛…」と囁きながら近付いた。
ピクッと指先を動かした彼女は、恐る恐る目線を上げる。
その瞳には涙が浮かび、俺はそれを見ると堪らない気持ちが湧き出して抱き締めた。
「凛…」

