ロング・バケーション

町はそんなに広くはないが、この雪降りの中で彼女が向かう所と言えば何処だ__。

ザクザクと凍った雪道を走りながら視線を左右に振るが見つからない。
そのうち、まさか駅に向かったのか?と思いだし、何時だ?と時計を確認した。

針は十二時をとっくに回っていて、もう直ぐ電車が出る時刻だ。


(まさかとは思うが帰るとか?)


さっき待合室で泰葉が有らぬ噂を…と訴えていた。
それは俺があの病院を手伝い出してから周囲が勝手に決め付けだした事だ。


(もしかして、それを聞いて勘違いを……)


それなら怒って帰ってしまうかもしれない。
あの日の俺のように彼女が逃げてしまう__


「まずい。急がないと」


向きを変えて走り出すと、雪の粒は大きくなり、向かい風も手伝って進み難い。


(こういう時ばかりいつも…)


雪を邪魔者扱いしながら走り、駅の構内に飛び込んだ。
丁度急行列車が走りだした後のようで、ゾロゾロと改札を出てくる人の波がある。


(凛は!?)


間に合わなかったのか…と思いながらも改札を抜けさせて貰い、ホームの端から端までを見遣った。