ロング・バケーション

信じられなくて、まさか…と思いつつも彼女が現れるのを待っていた。

そしたら待合室が賑やかになったものだから、ひょっとして来たのか…と様子を窺いに行った。


初めは泰葉が患者達と戯れているのしか目に入らなかった。それはいつも目にする光景で、鬱陶しいな…としか思ってなかった。

ところが、何気なく外した視線の先に彼女が居るのが見え、思わず名前を呼びそうになった。



「り…」


その途端、後からにしようと我慢した。
地元の人間にあれこれと詮索をされるのが嫌だと感じたせいだ。



(なのに、何でだ)


走りながら辺りを見回すが、彼女の姿は何処にもない。
此処まで来ていながら何処へ行ったと焦り、とにかく闇雲に探し始めた。