ロング・バケーション

漫才の様な会話を聞きながら、次第に来るべきじゃなかったのかな…と思いだした。

この町の人には私みたいな都会生まれの人間は馴染みがなく、つくづく余所者なのだ…と知らされた。



「なんだ、喧しいぞ」


ドアの開く音と同時に張りのある声が聞こえ、ギクッと背中を仰け反らせる。
奥からおばあさんと一緒に出てきた人を視界に入れ、ドキッと胸を弾ませた。


「…あ、ワタルちゃん」


受付の女性は彼を振り返り、彼の目線も彼女を捉える。


「泰葉（やすは）、患者と一緒になって騒ぐな」


「だって、皆が有らぬ噂を言うから…」


彼をワタルちゃんと呼び、彼女を名前で呼び捨てる二人の関係は何？

思わず緊張して張り詰めてくる気持ちに、眼球も動かせずに息を飲んだ。

そのうち困ったように彼女に言い訳されている彼の目線が逸れ、スッとこっちに注がれる。


「り…」


驚いた彼の目が目を丸くなり、声を出し掛けて直ぐに止まった。


「……とにかく静かにしろよ。中には点滴中の患者もいるんだぞ」