「え、あの…」


咄嗟には言い出し難く、口籠もってしまった。


「おばあちゃん、別に何処からでもいいじゃない」


気にしなくてもいいのよ…と囁かれ、その人に中へどうぞ…と促した。

不満そうな顔つきで奥へと向かうおばあさんとは入れ替わりで出て来た人も白髪の男性で、此処にはお年寄りしか来ないのか?と目を配りながら思った。



「田畑さんどうでした?」


受付カウンターに戻りながら、女性は白髪の男性に話しかける。


「喉が赤いから風邪だろうって言われたよ。うがいと手洗いを忘れないようにとさ」


エヘンと咳払いをしている声は太めだ。見た目よりも若いのかなと窺い、じっと見つめながら祖父と同じくらいの年齢かな…と考えた。



実は、此処に来る前の晩、祖父を見舞った。

ICUから一般病室へ移っていた祖父は、ベッド上で目を閉じて眠っていた。

ぱっと見、呼吸は安定し顔色も運ばれた日よりも良くなっている。けれど、頬が細くなったように見え、シュン…としながら、おじいちゃんごめん…と謝った。



「……何をだ」