見たところこの病院の受付事務をしている人らしく、白いブラウスの上に紺色のベストと同色のタイトスカートを身に付けている。


「どうも、すみません」


ブーツのファスナーを下ろしながら、スリッパに履き替えたら名前を名乗ろうと決めた。
それから、ドクターに会いに来たと伝え、取り次いで貰えるかを問い合わせるつもりだった。



「やっちゃん、今日、大先生は?」


常連らしき患者の一人が彼女を見ながら訊ねる。側に立っていた人は振り返り、まだ入院中よ…と答えた。


「骨折だからね。二週間くらいはかかるかな」


彼女の言葉に、骨折?と驚いて顔を上げる。


「だったら今日も若先生の診察だね」


「ええ、そうよ」


笑って答える彼女の視線が、スリッパに履き替えた私に注がれる。


「どうぞ」


手招いてファンヒーターの前に座らされ、慌てて名前を名乗ろうとしたのだが。


「この辺では見ない顔だね」


彼のことを「若先生」と呼んだ患者さんが呟き、ギクッとして見ると、何処から来たの?と問われた。