コートにも張り付いた雪を払い除け、一歩ずつ進んでドアの取っ手に手を掛けた時__


スーッと先に開いてビクッ!とした。
目線を取っ手から上げてみると、ニッコリと微笑む女性の姿があり。



「受診ですか?」


雪のように白い肌の女性がそう聞いた。
はい、いいえ…と曖昧な返事をしてしまい、どっち?という様な顔つきをされる。



「あの…」


航さんに会いに来たといきなり言ったら、何者?と疑われてしまうだろうか。


(困ったな)


悩みながら口元に手をやり、え…と、と声を発する。


「とにかく中に入られませんか?そのままそこに居ても寒いだけですし」


風邪を引きますよ、と言う親切な女性の声に促され、私はおずおずと院内に足を踏み入れた。

病院の三和土は新聞紙を一枚広げたくらいの大きさしかなく、待合室にはファンヒーターが焚かれ、長椅子には見たところ数人しか座っていない。


「どうぞ上がってください」


私とあまり年の違わない感じの女性は、スリッパを棚から出して勧めてきた。