(もしも、この町に住むことになるなら、私も運転免許くらいは取る必要があるかな)


気の早いことを思いながら歩き出し、時折つるっと滑る爪先にヒヤリとする。


「やっぱり長靴の方が良かったか」


後悔先に立たずだな…と思った矢先、目の前に目的の看板を見つけた。



『城島内科医院』


これがドクターの実家か。

じぃーと眺めて立ち竦む。
ようやくと言うかやっと彼に会える。

そう思うと胸がドキドキと弾んだ。
日曜日に会って以来、四日ぶりの再会だ。


(急に来ちゃった、と言ったら驚くかな)


その前に何しに此処へ?と言われたらどう答えればいいのだろう。


頭の中で彼に言うべき言葉の内容を思い出す。
先ずは、先に謝って、それから祖父のことを話して安心させて、そして……


雪の降る地面を見つめながら考え込んでいた。
さっさと中に入らなかったのは、やはり勇気が出なかったからだ。



(…よしっ!この線で頑張ろう!)


いい加減考えてから顔を上げた。
頭に被った帽子には、雪が降り積もって冷たくなり始めている。