ロング・バケーション

『センセ、ビールくらいで酔うんですか？』


呆れる…と言った一咲に苦い表情を向け、苦手なんだよ、と呟いたらしく。


『どうして苦手なのにビールなんて飲んだんです？』


もしかして、凛ちゃんと関係ありですか？と聞くと、肘を付いた彼が息を吐き出し、ああ…と消え入る様な声で返事をした。


『縁談の相手に会うことがそんなに許せなかったの？凛ちゃんは相手に断る為に会うと言ってましたよ？』


一咲の言葉に顔を上げ、聞いたのか？と言うもんだから頷き……


『それだけじゃなくて、センセが距離を置くって言ったと聞きました。凛ちゃんすっごく悄気てて、おばあちゃんの為に縁談相手に会うと決めたのに…とこぼしてた』


『おばあちゃん？』


キョトンとする彼に、一咲はこう言った。


『はい。だって、凛ちゃんにとっておばあちゃんは大切な人だから』


『大切な人？』


ドクターは驚いた顔でどういう意味かと訊ねてきた。



「だから、私、教えてあげたの。凛ちゃんがナースになると決めた理由」