ロング・バケーション

昨日はたまたま偶然が重なって彼があのホテルにいたけれど、私たちの関係はとっくに解消されていて、そんな大事なことも話して貰えない間柄に変わったのだ。


(昨日は私が助けてもらったのに…)


きゅっと唇を噛みながら苦い気持ちが湧いてくる。
祖父のことでお世話になったのに、それを返すことも出来ない自分にイラついた。


それでも仕様がないのだ…と言い聞かせ、黙々と午前中の仕事をこなす。
だけど気分が晴れないまま昼食休憩となり、惰性のように麺類を選んだ。


「あっ、凛ちゃんも今から?」


後ろから一咲の声がして、くるっと振り向くと近付いてきた。


「私もなんだ。丁度良かった」


そう言うと一咲は券売機の前で、うーん…と悩み、今日は生姜焼き定食にしようとボタンを押す。


「一咲はいつもボリューミーね」


カウンターでにゅうめんセットの券を出すと、凛ちゃんは少食過ぎ、と呆れた。


「只でさえ痩せてるのに麺類ばかりなんて。もっとしっかり食べないと体壊すよ?」