ロング・バケーション

それで老健の方は暫く別のドクターが担当するらしく、回診の時は宜しくと頼まれたそうなのだ。


「もしかすると、そのまま退職ということもあるかもって。だから、野々宮さんが何かを聞いてるのかなと思ったのよ」


主任は私達が距離を置く関係になったとは知らない。彼にそう言われてから日も浅いし、無理もないことだけれど。


「私は何も聞かされてませんよ」


「そうみたいね。あーあ、城島先生が良かったのに」


残念そうに呟くと、椅子を回して立ち上がる。


「患者さん達のウケも良かったのにね」


誤解をされない為にか、言い訳のように付け加えた。


「ねえ、もしも野々宮さんの方に先生から連絡があったら聞いてみて。休暇ってどのくらい迄ですか?って」


そう言うと国村主任は医務室を出て行った。
私は処置台の物品補充を始め、頭の中で主任の言葉に対する反論を考えた。



(私に連絡なんてないのに…)


それがあるならとっくの昔に連絡をしてきている筈だ。
父親が足を痛めたから休む…と、あのドクターなら必ず。


(それがないってことは、私達はもう終わりなのよ)