でも、もっと地面に近い所で暮らしたかった…と母は呟き、そしたらもっと多くの犬の面倒が見てやれるのに…と囁いた。


「あのマンションでは、今いる三匹がいいところだわ」


その言葉に実家の愛犬達を思い出した。


実は、あの犬達は全部捨て犬だった。
行く宛もなく、母の勤めるペットショップへと持ち込まれた子犬達。


どの子も生まれて間もない状態で、トリマーをしている母が見兼ねて、家で面倒を見ると言い持ち帰って来た。


「未だにお店には子犬や猫が持ち込まれてくるのよ。それを見たら堪らなくなるわ」


飼って貰えそうな子犬や子猫ならまだしも、生まれて半年も経つと、ほぼ飼い手がつかなくなってしまう。


母はそういう犬達の為に、いつか土地付きの一軒家に住みたかったのだ。

けれど、お金を貯めている最中に祖母が亡くなり、その夢を諦めざる負えなくなった。


「それでもあの子達の命は救われたんだ。それだけでもお義父さんには感謝をしないと」


あのマンションで飼ってもいいと許してくれた。
あの傲慢な人がだよ?と父は祖父の肩を持つ。