全員が冷や汗をかきながらマッサージをしていると、ようやく救急車のサイレンが聞こえてきた。

館内を走って来る救急隊員に事情を聞かれたホテルマンがドクターと替わり、彼が事の成り行きを話して聞かせる。


「多分、心室細動の発作だと思われます。急いで心臓外科のある病院へ運んで下さい」


ドクターはそう言うと、胸から名刺を取り出した。
それを確かめた救急隊員は納得したように頷きを返し、搬送先の病院へ連絡を、と指示を出した。


「どなたかこの人の家族を知りませんか」


声を上げる隊員に、私です!と返事をした。


「孫です」


「ではご一緒に付き添って下さい!先生、貴方も是非」


ドクターは勧められると素直に応じてくれた。
救急隊員二人はストレッチャーに祖父を乗せ、車内に私達が乗り込むと走り出した。


祖父の顔色はさっきよりも幾分良くなったとは言えるが、まだ意識までは戻らない。

私はその顔を見つめたまま心痛な面持ちでいて、自分が祖父を興奮させなければ良かったのだ…と反省を繰り返していた。



(どうしよう……おじいちゃんが死んだら……)