ロング・バケーション

『電流を流します。離れて下さい』


音声ガイドが流れ、周囲に集まっている人達は祖父の体から遠去かる。

私も彼も少しだけ離れ、スイッチが入ると祖父の体がビクッと揺れた。

その後で直ぐに心臓マッサージを行うが、祖父の様子は変わらなかった。

ドクターは音声ガイドの指示に従い、もう一度だけやってみようと囁き、スイッチを入れて作動させる。


二度目の電流を流した後、祖父の指先がピクッと微かに揺れ動くのが見えた。


「心臓マッサージに切り替える！」


ドクターはそう言うと、ＡＥＤのスイッチを切ってパットを剥がした。
祖父の体の横に座り、胸を真上から押し始めた。


「私が替わります。先生は脈を診て」


私は彼の側へ行きそう言った。
頷く相手と場所を替わり、祖父の心臓を押し続けた。


「いいぞ、そのまま続けて。他の人も彼女に替わってやって下さい」


ホテルマン達は日頃の訓練を思い出したのか、次々と声を掛け合ってマッサージをしてくれる。

私は救急車が来るまでの間、祖父の手足を擦り続け、体温が必要以上に下がらないよう配慮した。