ロング・バケーション

話しながら、ああそうだ…と思った。

私は雪国に嫁ぐことばかりを気にしていたけれど、ドクターは自分と結婚して、開業医を一緒にやろうと言ってくれていた。



『君となら共にやれると思うんだ』


そう言っていた言葉の意味が急に解り、ぐっと込み上げてくるものがあった。



「ごめんなさい。ご縁はこれで終わりにさせて頂きます」


祖父の我が儘に付き合わせて申し訳なかった。
そんな気持ちで深く頭を下げた。


それからくるっと向きを変えてダッシュ。
ヒールのあるパンプスで走るから足元がグラグラして転びそうになるのを我慢して向かった。



ガーデンホテルのロビーでは、祖父が倉元さんの父親と一緒に談笑をしている。
楽しそうに何の話をしているのかは知らないが、それを見ていると無性に頭にきて__。



「おじいちゃん!」


思う以上の大声が出てしまい、一瞬自分でも怯んでしまったが。


「何だ凛、その声は」


振り向いて言い返す祖父の声を聞いたら怯む気持ちは吹き飛んだ。
コツコツ…と大理石の床を踏み鳴らして近寄り、ぎゅっと手を握り締めて言い放った。