ロング・バケーション

(でも、おじいちゃんならやり兼ねない。
だって、私が看護師になるのを毛嫌ってたくらいだから)


何もかもが祖父の思うツボにハマったんだ…と思った。

あの日、ドクターが相手の思うツボにハマると言ったのはつまり、祖父の思惑のことだったのではないだろうか。


そう考えると急に彼の気持ちが理解でき、私は深く反省をさせられた__。



「凛さん?どうしました?」


腕に手を掛ける人の顔を見て、彼が悪い訳ではないと思ったのだが。



「やめて下さい。触らないで」


腕を振り解くと、キッと目を見開いて言った。


「折角ですけど、私は看護師をやめたいとは思ってもいませんし、第一貴方と結婚しようとも考えていません」


私が好きなのは違う人だ。
その人以外とは、付き合いも結婚もしたくない。


そう思うと泣きたくなった。
もう終わってしまった人と結婚なんて出来る訳もないのだ…と実感して。

けれど、今此処で泣き出す訳にもいかず、気を張り詰めて続けた。


「申し訳ありませんけど、この話はなかったことにして下さい。結婚を希望されるのなら別の方を探して」