そう言うと私にきちんと向かい合った。
こっちはその姿を目に入れ、まだ何も言い出せずにぼうっとしていた。


「僕は野々宮凛さんと結婚を前提に付き合いたいんですが、凛さんは如何ですか?」


好青年そうな彼はそう聞いて、私の返事が戻るのを待つ。
けれど、こっちは頭の中が白くて、いきなりな言葉の数々に目も口も丸くなってしまったままだ。



「…え……あの…」


少ししてようやくそれだけ言えた。
だけど、その先は何も言えずに押し黙ったまま目を伏せる。


私は確か、此処に縁談を断りに行くと祖父には言っていた筈だ。
なのに、さっきから聞いていると彼は全くそれを知らないように感じる。


ひょっとして…とは思うが、何も聞いてないのだろうか。

まさかとは思うけれど、祖父は私が縁談を断ったのも、この人には話してないのかもしれない__。


(…じゃあ、この間言ってたことは……)



真っ赤な嘘!?


そう思うと、急に落胆する気持ちと共に憤りが沸き上がってしまった。

あの祖父が私を出し抜いて、この人との縁談をさせようとするなんて__。