「はぁ…」


大いに溜息を吐いた。
そんな私を覗き込む相手。


「どうかしましたか?凛さん」


名前を呼ばれて顔を見上げると、眼前には爽やかイケメンの彼がいて。


「…いえ、別に何でも」


そう言いながらまたも溜息。
さっきから私は溜息しか吐いてない。


「何か悩みでもあるんですか?」


仕事で営業をしていると聞いた彼は、親切そうに問い掛けてくる。


「悩みなんて…ないです」


お気になさらずと返事をして息を吐く。
流石に相手も困惑気味で、だから気にしないでと言っているのに…と言いたくなった。



今日は日曜日。
私は散々ごねて行きたくないと言い張ったのだが、一度は会うと決めただろうと祖父に窘められ、仕様がなく縁談の相手に断りを言いに来た。


けれど、よくよく考えてみれば、私はもうドクターと別れたのだ。
今更誰と付き合うことになってもいいのだ…と思うと、断りを言うのもバカらしくて__


自暴自棄。
正にそんな気分で会ったホテルの中庭を歩いていた。



「元気ないですね。お仕事が忙しいんですか?」