其処にいるよ、と指差され、私は振り向いてぎょっとした。

食事の受け取りカウンターを離れた彼が、トレイを抱えてやって来ようとしている。


(まずい。どうしたら…)


オロオロとしだす私のカーディガンを引っ張り、待てと言わんばかりに座らせる一咲。


「堂々としてなよ。凛ちゃんにも言い分があるんでしょ」


誤解されたままでいいの?と聞かれ、良くない!とは思ったが……。


(でも、気不味さマックスだし)


どうするべき?と思いながらも俯いて座る。
近づいて来る彼の足音に胸が鳴り、どうすればいいかを考え込んでいた。



__けれど、その心配は無用だった。

ドクターは私がいても無視をして、何も言わずに通り過ぎて行ったのだから。



「…あれ?」


一咲は振り向き、ポカンと彼の背中を見送る。
私はそんな彼女とは対照的に下を向いたままで、ぎゅっと唇を噛み締めた。


「…ほ、ほらね、」


そう言うと一咲が何かを言う前に立て続けに喋った。


「私達もう終わったも同然なのよ。その証拠に彼も話しかけてもこなかったでしょ」