「だって、それはセンセとその人を両天秤にかける行為でしょ。

凛ちゃんにはそのつもりが無かったかもしれないけど、先生にしたらそう受け止めたのかもしれないよ」


一咲はそう言ってパクッとご飯を放り込む。


「天秤?」


私は目を離さずにそう聞いた。


「そうよ。その相手の人がどんな人かは知らないけど、聞いた限りではセンセは雪国の出身者で、相手はそうじゃないみたい。

だったら、センセにとっては部が悪いんじゃないの?
都会生まれの凛ちゃんが、雪国育ちのセンセを選ぶとは考えにくいから」


見知らぬ土地にお嫁に行くのは気が引けるからね…と言ってくる。

私はプロポーズされた時の気持ちの重さを思い出して、何も言えずに押し黙った。


「凛ちゃんはこれからセンセとどうなりたいとかって夢がある?まだないのなら、先にそこのところを考えてみる必要があるんじゃないのかな?」


案外とそういう意味での距離を置こうかもしれないよ?と言われ、目から鱗が落ちるような気分に襲われた。



「……彼とどうなりたいか?」


気が抜けるように繰り返すと、一咲はうんと頷きを返してきた。