「本当みたいなの。実家に帰って開業医を継ぐと話してた」
彼の実家は雪国にあり、往診もしているらしいと話すと、一咲はウーン…と声を漏らして……
「それ、東北とか北海道?」
「そこまではまだ聞いてないけど、私がついて来ると彼は信じ込んでたみたいで」
「どうして?」
「それは私が実家の財産に興味がないから」
「財産?」
あっ…と思い出して口を噤む。
祖父の所有する財産については、一咲に話したこともなかった。
「それはどうでもいいんだけど、とにかく私が縁談を断る為に相手に会うのが気に入らなかったみたい」
話していたことと違うと受け取られ、嘘だと言って決め付けられたんだと教えた。
「私が相手に会うと決めたのは、祖父の為なんかじゃなくて、亡くなった祖母が生きていたら、きっと同じように願うだろうな…と思ったからなのに」
話しているとお腹の底からムカムカとした感情が湧いてくる。我ながらいつまでもしつこいな…とは思うけれど、どうにも我慢がしづらい。
「それセンセには話したの?」
「話す前から逃げ出したのよ!」
彼の実家は雪国にあり、往診もしているらしいと話すと、一咲はウーン…と声を漏らして……
「それ、東北とか北海道?」
「そこまではまだ聞いてないけど、私がついて来ると彼は信じ込んでたみたいで」
「どうして?」
「それは私が実家の財産に興味がないから」
「財産?」
あっ…と思い出して口を噤む。
祖父の所有する財産については、一咲に話したこともなかった。
「それはどうでもいいんだけど、とにかく私が縁談を断る為に相手に会うのが気に入らなかったみたい」
話していたことと違うと受け取られ、嘘だと言って決め付けられたんだと教えた。
「私が相手に会うと決めたのは、祖父の為なんかじゃなくて、亡くなった祖母が生きていたら、きっと同じように願うだろうな…と思ったからなのに」
話しているとお腹の底からムカムカとした感情が湧いてくる。我ながらいつまでもしつこいな…とは思うけれど、どうにも我慢がしづらい。
「それセンセには話したの?」
「話す前から逃げ出したのよ!」

