ロング・バケーション

ゴクン、と水を飲み込んで呟けば、こっちを振り向いてた一咲が、「えっ？」と言うなり停止。



「……な、何で？」


目を点にしたまま聞き返してきて、私は言わなくても良かった…と思ったのだが。


「それが分からないの。私が断った縁談の相手に一度だけ会いに行くと言ったらそう言いだして」


火曜日の夜の顛末を教えた。
勿論、それを語るには、早過ぎるドクターのプロポーズがあったことを言わなくてはいけなかった。



「プ…プロポーズ！？」


声を上げる一咲の口を手で押さえる。
シー！ッと小声で言い渡し、誰も聞いていないかを確認した。



「……ごめん」


ボソボソと謝ってくる一咲。
幸いにも周囲には人がなくて、私はホッと胸を撫で下ろした。


「凛ちゃん、センセからもうプロポーズされてたの？」


早くない？と驚く一咲に、早いわよ…と答えながら呆れる。


「でも、それには訳があるの。ほら、月曜日に言ったでしょ。彼が退職するかも…って話」


「ああ、此処を辞めて病院を変わるって噂ね」


消えてたんじゃないんだ、と言う一咲に、うん…と首を縦に振った。