ロング・バケーション

祖父の財産に興味がないのは本当だし、今回のことだって、祖父よりも祖母を思い出したから応じただけのこと。

そこに微塵も嘘はないのに、どうして彼は怒ったりするの！？


「何よ。そんなに心の狭い人な訳！？」


ムッとして呟いていた。
私の話に耳も傾けずに逃げて行った彼が許せないと思い、ドン！とテーブルを叩いて立ち上がった。


「何よ、あの態度」


怒ったように呟き、ソファに置いているバッグを掴む。
彼に見送って貰いたくもないと感じてコートを腕に引っ掛けると、慌ててその部屋から飛び出した。


バタン！と大きな音がすると、彼の寝室のドアのが開き、それでも直ぐには顔を出してこない彼に大いに呆れた。



「帰ります！」


見送らなくてもいい、と断言してブーツを履く。
ショート丈のファスナーを上げることもしないでドアレバーを下ろし、振り返りもしないで部屋を出た。


「凛っ！」


彼の声が聞こえたけど無視。
自分は何一つあんな言い方をされる覚えなんてないと思うから、彼の顔を見るのですら嫌だと感じて走り出した。