「ああ、愛犬達に会いに?」


「ええ、それもあったんですけど」


本当は意図もなしに向かったのだ。
昨夜の申し出のことを両親に伝えるべきかどうかを悩みながら。


「何?他に目的でもあった?」


目を向けてくる彼に視線を流し、いえ、別に…と呟く。

そのまま目を伏せて黙ってしまったせいなのか、彼は少しの間、何も言わずに食事をしていた。



「あのね、航さん」


実家であったことを弁明しておこうと顔を上げ、こっちを見つめ返す彼の視線と対峙する。

それに胸が狭まるのを覚えながら意を決し、祖父に頼まれたことを伝えた。


「実はあの、前に断った縁談の相手が、どうしても一度、私と話がしたいと言うそうなの。

祖父はその人の父親に自分の財産管理を任せているものだから、容易には断れない様なことを言ってきて…」


「ふぅん、それで」


極めて冷静な感じで聞いてくるが、明らかに少しムッとしている。
彼の雰囲気が険しくなるのを感じながら箸を握り直し、それでね…と肩を竦めて続けた。