「そんなの言われても」


困るよ、本当に。


「一度会って、向こうにきちんと断りを言ってくれたらいいんだ。それで相手も納得がいくと思うし、再度の申し出はしないと約束もしてくれているしな」


そんなところまで約束が付いているなら、祖父の一押しでどうとでもなりそうな気がするが。


「おじいちゃん、私…」


昨日付き合っている人からプロポーズをされて迷っているとは言えない。

話をするなら先ずは両親に。
祖父に話すのはその後がいい。


「頼むよ、凛。おじいちゃん孝行だと思って」


両手を合わせる祖父に「やめて」と願う。
申し訳なさそうにする表情にも、苦々しい気持ちしか湧いてこないのだが__



「……いいよ、一度きりなら」


祖母が生きていたら、きっと一緒になって願っただろうと考えた。亭主関白だった祖父に、寄り添うように生きていた人だった。



「そうか。有難い」


祖父は嬉しそうに私に向かって満面の笑みを浮かべる。

そして、顔合わせの日には立派な衣装を準備すると張りきりだし、私は慌ててそんなことをしないで、と引き止めた。