ロング・バケーション

「だけど俺、凛は一緒に来てくれると思ってる。君は前に言ってただろ。お祖父さんが持ってる建物や土地には全く興味がないって。

それは、この土地にシガラミが無いって意味だよな。だから、俺と何処へ行こうと自由ってことだろ」


「え…それは」


確かにそうは言った。
自分が祖父の持っている財産を受け継ぐ立場ではないと思ったから。

だけど、イコール何処にでも行けるとは思わない。
行くことも考えたことがないし、そもそも彼の実家がそんな場所にあると聞いたのも今だ。


「急がないけど、あまり待ってる余裕もないから決まったら教えてくれよ。そしたら俺、いつでも凛の実家に挨拶に行くし」


ドクターはそう言うと、喉がカラカラだと笑ってグラスの中身を飲み干した。
一気に飲んだ後はいつも通りに食器を洗い、乾かしてくれた。


私は気が抜けたまま、彼の行動を見守っていた。

自分の部屋にいるのに別の場所にいる様な違和感を感じるくらい動揺した状態で、キッチンからこっちへ来る彼の姿を目に入れた__。