「お邪魔します」


何だか入りにくいものを感じたからそう言った。
ドクターは笑いながらも突っ込まず、お疲れ様と迎えてくれる。


「一日ぶりだけど元気だった?」


様子がおかしいとでも感じたのか、そう聞かれて胸がドキンと鳴り響く。


「…はい」


平静を装って返事をすれば、彼は優しく微笑みを返してくる。
たったそれだけのことなのに胸が苦しくて、自分でも呆れるくらいに彼のことが好きだな…と感じた。



「今夜は何を食べようか」


シートベルトを締めながら聞いてくる彼。
それに何でもいいと答えつつ、ハッと思いついて「麺類以外で」と言い直した。


「今日の昼間も麺だったのか?」


呆れるように言われ、手早いからと答える。
彼は苦笑しながらも、それじゃあ麺類以外にしよう…と言ってくれ、走り出した車内では休日の過ごし方も教えてくれず、日中の仕事についてだけ語った。


それはこれまでと同じだった。
ただ、自分が彼に訊きたいと思うことがあるせいか、妙に気持ちが悪くて不満だった。