「あくまでも噂よ、噂」


青木さんに向かい、余計なことを言わないと主任が注意している。
何処からそんな噂が出てきたのか、ちっともこっちは分からない。


「野々宮さん気にしないで。今の話は忘れて仕事に専念してね」


呆然としている私を気遣って言われた。


「ああ…はい」


返事をしたが、忘れるなんてどうやって。
一度耳にしてしまったからには真相がどうしても気になる。



（先生に連絡を…ああ、でも今は診療時間だ…）


自分も遅出業務が待っている。
申し送りを読んだら入浴後の患者の処置にも行かないといけない。


（お昼にもしも会ったら聞いてみよう。病院を辞めるんですか？といきなり聞いたら驚くかな）


でも今、自分は十分驚いている。
降って湧いた様な彼の退職話にドキドキと胸が不安そうに鳴った＿＿＿。