今日のように常勤の看護師が三人集まることはあまり無い。
採血や定期受診、会議などがある時だけは集合する。


「ねえ、野々宮さんは聞いた?」


私の方に椅子を回し、青木さんが意地の悪そうな笑みを浮かべる。
それに何だ…と思う気持ちを堪え、何をですか?と問い直した。


「ほら主任、彼女が聞いてないんだから間違いじゃないですか?」


青木さんは私の質問には答えず、後ろにいる主任を椅子ごと振り返って聞いている。


「でも、私は院長先生から聞いたのよ。来年度は老健を診る内科医が替わるからって」


主任も不思議そうな顔をして言い返す。
何のことだか意味の見えてこない私は、どういうことですか?と主任の方へ目を向けた。


「いや、あの…」


国村主任は言いにくそうに口籠る。
けれど、青木さんは逆に嬉しそうだ。


「実はね、城島先生が法人を辞めるって話があるの。病院を変わって、別の所へ行くんじゃないかと噂されてるそうよ」


彼女なのに何も聞かされてないの?と言いたげな表情だ。
全く何も知らされてないし噂も耳に入ってなかった私は、えっ…と声を発したまま動けなくなった。