ロング・バケーション

「まあ仕様がないか。凛は仕事の鬼だし」


「何ですか、それ。私は天使だと言われても鬼なんかじゃないですよ」


プン!と怒ると笑われた。
楽しく会話して食事をした後は、彼にマンションの足元まで送られ__



「凛…」


名残惜しそうに舌を絡ませてキスをしてくるドクター。
クラクラと軽い眩暈に襲われながら車外へと出て、クラクッションを鳴らして走り去る車体を見送った。



彼が病院を変わるかもしれないと聞いたのは、月曜日の勤務に入った時だ。
医務室で国村主任と青木さんが話し込んでいた。



「あ…お疲れ様」


医務室のドアを開けると私の方に振り返った主任が挨拶をする。


「おはようございます。お疲れ様です」


ドアを開ける前に、ちらっと城島ドクターがね…と言うのが聞こえた。
その言葉を発したと思われる主任は、私がドアを開けたからギクッとしたようだ。


「野々宮さん、おはよう」


年下のくせに丁寧な言葉遣いもしない青木さんが挨拶してくる。


「おはようございます」


小さく会釈をして二人の側を擦り抜け、三つ並んだデスクの上に手持ちのバッグを置く。