ロング・バケーション

(うーん……)


眉間に皺を寄せたまま午後の業務を終えて更衣室へ向かった。着替えているとラインのメッセージ音が鳴り、アプリを開くとドクターからだった。


『仕事済んだ?駐車場で待ってるから』


昨夜と何一つ変わらない彼。
そんな人の思いが、ある日急に覚めてしまうこともあるのだろうか。


(何をキッカケにして?)


ハッキリしない不安に包まれながら駐車場へと向かいだした。
遠目に彼の車を見つけ、走り寄ろうとしたが立ち止まる。



ドクターは二、三人の女子達に取り囲まれて話をしていた。
どうも外来の若いナース達みたいで、嬉しそうな声が響いてくる。


「先生どうして此処に?」


「もしかして誰かと待ち合わせですか?」


彼女〜?と笑い合いながら燥ぐ人達のいる所へはどうにも行きにくい。
仕事中に揶揄われるのもまだ慣れてない状況下で、また別のストレスに晒されそうだ。


けれど、ドクターはそんな女子達の声にも平気そうな笑みを見せている。揶揄いを怒る訳でもなく、平然と受け止めているみたい。