ロング・バケーション

日勤の業務が終わるのは十八時半だ。
直ぐに上がれる訳でもないから時刻は既に十九時近い。


「そんなに待たなくても…いや、中で待っていれば良かったのに」


冷えてませんか?とコートの袖に触れる。
ひんやりと冷たい感触に驚き、ひゃー…と気持ちが焦った。


「先生、風邪引きますよ。こんなに冷えてたら」


自分を待ってまで慰労してくれなくてもいいと呆れる気持ちもあったけれど、とにかく、それよりも早く何処か温かい場所に移動して…と願った。


「俺の車なら駐車場に置いてるんだけど」


「だったらそこへ行って下さい」


急いで、と言うと何故か腕を掴まれた。


「野々宮さんも一緒に。明日の予定を考えよう」


「えっ?私は…」


有無を言わさずに連れて行かれた。
職員駐車場と看板の掲げられたフェンスの中には、軽自動車から4WDまでいろんな車種が停まっている。

その中で綺麗にボディを磨かれたシルバーの車のロックが外れ、それがドクターの車らしいと分かった。



「乗って」