「俺はそんな君だから、きっと他の人とは違う気がしたんだ。純で真っ直ぐで真面目で嘘が吐けなくて」


「ほ…褒めすぎです!」


慌てて手を上げようとした。
けれど、両手は彼に握られ、ガッチリと捕まれたままで動かせず__。


「先生」


「だから、今は医師じゃないから」


そう言うと背中に腕を回されて寄せられてしまう。
ぴたっと彼の胸にくっ付く頭の上に顎を乗せられ、彼が苦しそうな声を漏らした。


「……俺は今、一人の男として凛の前にいるんだ」


だから先生と呼ばないように言う彼の声がして、私は胸が震えだして止まらなくなった。

ぎゅうっと胸の辺りのワイシャツを握りしめ、耳の側で鳴る心臓の音を聞いた__。




「……航…さん…」


ドキドキしながら彼を呼び、俯いていた顔を上げようとしたのだけど……


「ちょっと待って。今、目が眩んでるから」


そう言いだす彼にぎょっとする。
大丈夫ですか?と問い合わせると、意外な答えが戻ってきた。


「名前呼ばれて武者震いがきたのなんて初めてで。……だから今、いろんな意味で感動してる」