「本当に旨いよ。凛さんの作る料理は出汁が特に美味しい」


唯一自分が取った出汁を褒めてくる。
流石はモテ男くん、抜け目がないなと思いつつ、ありがとうございます…とお礼を言った。


食べながら暫く沈黙が続いた。
ズズズ…と雑炊を食べる音と、フーフーと湯気を飛ばす息くらいしか聞こえない。

それも何だかどうかあると思った私は、無意識にテレビのリモコンに手を伸ばした。


「凛さん」


その手を止められてビクッとする。
掴んだリモコンごと手を握られていて、若干狼狽えながら、何ですか?と聞き返した。


「食事中はテレビを観るもんじゃないよ」


会話しようと言う彼に、会話らしい言葉も見つからないでいるのに?と目を向ける。


「昨日はさ」


言い出しっぺだからなのか、彼が先に口火を切った。


「俺も何も言わなくて悪かったと思う。なんか話すと全部が言い訳になりそうな気がして、何も言い出せなかっただけなんだ」


そう言うとポリッとたくあんを齧る。
私はその彼に倣うように自分もたくあんを食べ、ポリポリという歯応えと甘みを感じていた。