ロング・バケーション

年末年始は怒涛の如き勢いで過ぎ去った。

今年は元旦の雑煮を喉に詰まらせる患者もいなくてホッとした。
老健施設に入所している患者さん達の中には、麻痺がある人も多いから喉に詰まらせやすくて危険なのだ。



「ようやく休みか〜」


やっとだな…と呟いて着替え、施設の職員出口を出た時だ。戸口の壁際に立っていた人が前を遮り、ギャッ!と思わず声を上げた。



「その驚きようは心外だなぁ」


ギャッはないだろうと笑いながら言ってくる相手は城島ドクターだ。


「…だって、いきなり人が現れるなんて思ってないですよ」


ビックリした〜と胸を撫で下ろす。
ドクターはそれもそうかと納得し、済まなかった…と謝ってきた。


「明日の待ち合わせを何時にするか決めてなかったなと思って」


「えっ、まさか、それで待ってたんですか?」


このイケメンドクターが!?


「ああ、だって野々宮さんの連絡先知らないし。三が日は勤務だと言っていたから待っていればそのうち出てくるかな…と思って」


「いつからここに立ってたんです!?」


「んー、十六時半くらいから」


「二時間も!?」