ロング・バケーション

噛もうとしていたパスタを口から出そうになった。
振り返ると、真面目な顔つきでいる一咲が……


「向いてない以前に初めてなのかなぁと思えて。センセと付き合う前に、男性とは付き合ったこともないとは聞いてたけど、誰も好きにもならなかったの?」


一咲の言葉は青天の霹靂の様だった。
ぽかんとしているものだから彼女が吹き出し、凛ちゃん、と笑いながら肩をバシバシ叩く。


「ヤダもう、真に受けて」


ケラケラ笑う一咲の声なんて耳に入ってこない。
私は今更ながらそうだった…と思っていて、我ながらそこまで恋愛オンチだったのか…と呆れていたのだ。



「凛ちゃん?」


呆然としたまま固まっている私に一咲が問いかける。
ああ、うん…と意味もない答えを返し、その後は黙々とパスタを食べてやり過ごした。



午後からの仕事を終えて終業時刻を迎える。
今日は朝以来ずっとドクターとは顔を合わさなかったな…と思いながら更衣室へと向かい、服を着替えて外へ出た。

職員出口へと向かって歩きながら、このままでいいのかな…と思い始める。