ロング・バケーション

彼に「ごめん」と言わせるようなことはなかったと思うのに、私はそのフォローを怠ったのだ。


(やっぱり昨夜、何か文字を送るべきだった?)


何て?と思う間もなく四階には着いてしまう。
先に酒井さんの様子を見に行こうと足を向け、病室を訪ねた後で病棟で働く職員から服薬の状況などを確認して食間水を流して回った。


病棟の職員の話では、酒井さんはこのところ昼夜逆転傾向で、服薬の拒否や遅れも度々あったという。

元来頑固な性格の人が脳梗塞を患い、右半身に軽度の麻痺が残っている状況下だった。

脳梗塞の再発防止には欠かせない服薬なのだが、私達が言っても飲まないと決めた時には、絶対に飲まない様な患者さんではあった。


(なるべくしてなったと言うか……それでも、どうにかして確実に飲んで貰うべきだったな……)


甘かった…と痛感しながら食間水のパックが乗っていたワゴンを押して医務室へと戻る。
ドクターがまだ居たらやり辛いなと考えていたが、ドアを開けるとその姿は見えなかった。



(ほっ…。良かった)


何がだ、と自分にツッコミを入れつつ酒井さんの状況を青木さんに伝えた。