ロング・バケーション

自分は別件でドクターと話があるようだ。
はい…と返事をしたものの、どうして自分が確認しない!?と少しムッとした。

けれど、准看として働く私は、いつも彼女や国村主任の使いパシリみたいな仕事を回される。
これも中堅どころのしがない性だと諦め、申し送りのノートにさっと目を通して印鑑を付いた。


「四病棟に行ってきます」


早速様子を見に行こうとすると、青木さんはついでに…と言いながら本来自分がするべき経管患者用の食間水を流しておいて…と言いだす。


「…はい」


それは貴女の仕事でしょ!?と思うが、既に用意してある白湯の入ったパックを乗せたワゴンを手にして医務室を出た。



「はあ…」


声と一緒に息を吐き出してエレベーターの上向きの矢印ボタンを押した。
間もなくエレベーターは到着して、私はワゴンを先に押しながら中へと進む。

④のボタンを押してドアを閉じようとしながら、今日は追い掛けてもこない人のことを思った。


(もしかして、怒ってる?)


あのキスの後から何も言わなかった彼のことを思い出して、胸がぎゅっと痛くなる。