白衣を着た人はちっとも振り向かず、少しシュン…としてドアを閉める。
どうやら、朝から何事かあったらしく、青木さんとその人は今後の対応について話し合っているみたいだった。



(無視か…)


挨拶もして貰えないのか、とガックリしながら自分用のデスクの椅子の上にバッグを置く。
それから申し送りのノートに手を伸ばし、休日の間に起こった出来事を頭に入れておこうとした。


「…あ、そうだ。野々宮さん」


声をかけられ、視線をノートから外した。
振り向いた青木さんの肩越しに、会うと気不味いと思っていた人の顔が見える。

その表情はどこか固く締まっていて、結ばれている唇が、私が振り向いたことで更に固くなったように感じた。


「何でしょうか」


気落ちしそうになりながらも話を聞かなければ…と思い、気持ちを切り替えるように青木さんを見つめる。

彼女は私よりも年下だけど正看護師で、キリッとした眉毛の間に皺を寄せながら話し始めた。


「四病棟の酒井さん、脳梗塞が再発してるみたいなの。ケアワーカーから呂律が回ってないみたいだと報告がさっきあったから状況を確認しに行って下さい」