ロング・バケーション

大切なものに触れるみたいに優しく、そうっと。


「凛……」


さんを外されて呼ばれると、身体中の血液が沸いた様な感覚を覚えた。
私も彼を「先生」ではなく、「航さん」と名前で呼ばないと…と妙に焦りを感じたが__


彼の唇に邪魔された。
熱い口付けと強く抱き締められる腕の力に、息も吐けない程混乱した。

これまでは優しくて時に怖い感じのする人だと思っていたけれど、今のドクターは、まるで動物的な感じもして……。


ガクガク…と膝が震えだした。
角度を変えながら降り注いでくるキスに目眩のようなものを感じてもいたのだけど。


(怖い…)


そう思う気持ちが強くなっていき、膝だけでなく、手の指まで震えだす。
どうもそれに彼も気付いたらしく、口付けていた唇を離して舌を抜いた。


「……ごめん」


何故に謝られるのか分からないままで、ぼうっと彼を見ていた。

膝の震えはまだ少しだけ残っている__。



「帰ろう。送って行く」


ドクターはそう言って背中を向けた。

縋り付きたくなったけれど、それをせずに彼の後ろを離れて追いかけた___。