ロング・バケーション

飲みながら次第に焦ってくる。
ドクターの気が変わり、送らないと言われたらどうやって帰ればいいのだろうか。


(ここの住所も知らないし、道路へ出るにはどう行けばいいんだっけ……)


帰り方を悩んでいたら、ドクターが可笑しそうに笑いを含んだ。
向かい側にいる彼に視線を向けると、くくっと声を出さずに肩を震わせている。


「どうしたんですか?」


カップを手にしたままポカン…と見ていた。
ドクターは、いいや…と言いながら私を見返し、ふぅー…と息を吐いた。


「凛さんが必要以上に緊張しているから面白くて」


「えっ?」


「なんか必死に考え込んでるように見えるんだけど」


「えっ…そうですか?」


マズい。顔に出ていたか。


「俺が送らないと言いだしたらどうしようかと考え込んでいたんだろ。それくらい神妙な顔つきだったよ」


ダラダラ…と冷や汗を感じる。
エスパーか!?と声も出さずに見つめていると、椅子から立ち上がった彼が側に来た。


「俺としては泊まって行ってくれてもいいんだけど」


「えっ…あの」