ロング・バケーション

甘いのが良ければメープルシュガーにするけど?と問われ、酒好きなものだからブランデーでいいです…と返事をしたものの__。


「先生は?」


アルコールが入った物を飲んだら送ってもらえなくなる。
まさかいきなりお泊まりはちょっと…と焦った。


「俺はストレートでいいんだ。車の運転もあるし」


送ってくれる気でいるのだと分かり、そうですか…と呟く。
ドクターはその声を聞いて口元を少し歪ませ、カップに入ったコーヒーを持ってきた。


「これにブランデーを垂らすんだ」


そう言いながらカップに小さじ一杯程度のものを入れる。
かき混ぜてから、どうぞと差し出され、恐る恐る口を付けた。


「……不思議な味」


ふわっとブランデーの香りが漂い、身体の中が温もっていく様な気がする。


「寒い夜に飲むとよく眠れるんだ」


さっき私が涙ぐんだからなのか、何処までも気を遣ってくれるドクターに申し訳なくなる。

肩を竦めて両手でカップを包みながら飲み、何も話が思い浮かばずに無言でいた。



(……どうしよう。息が詰まりそう…)