それから一年が経った。僕は色を取り戻すきっかけをたった1つも得ることが出来ずにいた。彼女のこともあまりわからないままだった。
冬のある日、彼女は少し暗く、こう言った。
「今年は雪、降るかしら…。」
僕は聞く。
「雪、好きなの?」
「好き…なのかしら。好きとも言えるし嫌いとも言えるかもしれない。大切な人を思い出す…。」
「どんな人なの?」
「あなたによく似た人よ。優しくて。思いやりのある人だった。」
「それで僕を選んだの?」
「そうかもしれない…。」
「そっか。」
「それでもあなたの事、本当に大好き。」
「ありがとう。僕もだよ。」
傍から見れば最後なんて惚気にしか聞こえないかもしれない。
でも、今思い返せば、ひとつひとつが意味のある、大事な会話だったんだ。