けど生まれた時からこうだった訳では無い。
僕がこうなってしまったのは小学4年生の時。
ある日、朝目覚めると、もうそこに今まで見えていたものは無かった。
何が起きたのか分からなかった。夢を見ているのかと思った。
今まで見えていた鮮やかな世界は、灰色一色の錆び付いた世界になっていた。
最初の数日はパニックでどうすることも出来なかった。親にも相談できなかった。だが、誰にも言わないままでは本当に不便だと思い、色が無くなって数日後、両親には打ち明けた。
両親は心配し、すぐに僕は病院に連れていかれた。
色盲、視細胞が足りない病気だった。
その中でも僕は特に珍しい一色覚(全色盲)だった。
それから今まで僕は色が無いまま生きてきた。
一生治らないだろうとも医者に言われ、絶望していたあの時の僕は、まさかこんな事が起こるなんて思ってもいなかっただろう。