「私を連れて行ってくださいますか?」



これから先もあの王に運命を弄ばれるよりは、私は自分で違う運命の糸をたどりたい。


差し出された手をとると、ぐいと抱きあげられた。


そしてそのままゼルは窓へ歩み寄り、軽々と窓枠を乗り越えて空へと飛び上がった。

「きゃぁぁぁ」

いきなりのことに、夢中で目をつむりゼルにしがみついていたが、気がつくと大きな白い鳥の背中で空を飛んでいた。



眼下には緑の麦畑が青々としげって風に波打っている。

時折農夫達が頭上をいく大きな鳥を指差し叫んでいる。



そしてどこまでも続く青い空を、ゼルの鼓動と力強い羽ばたきの音を聞きながら、白い羽毛に包まれて、最初で最後となるだろう自分の故郷の姿を見納めた。